SES vs 自社開発の違いを徹底比較|働き方・年収・キャリア
「SESと自社開発、どちらの企業に入るべきだろうか」――エンジニア転職を考える方の多くが、この問いに直面します。
SES(システムエンジニアリングサービス)と自社開発企業は、同じIT業界でありながら働き方や年収、キャリアパスが大きく異なります。どちらにもメリットとデメリットがあり、一概に「こちらが正解」とは言えません。大切なのは、自分のキャリアステージや目標に合った選択をすることです。
本記事では、SESと自社開発企業の違いを年収・働き方・スキル習得・キャリアパスなど多角的な視点で徹底比較します。未経験からエンジニアを目指す方はもちろん、SESから自社開発への転職を検討している方にも役立つ内容をお届けします。
SESとは?自社開発とは?
まずは、SESと自社開発企業それぞれの基本的な仕組みを理解しておきましょう。
SES(システムエンジニアリングサービス)とは
SESとは、クライアント企業に対してエンジニアの技術力を提供する契約形態です。SES企業に所属するエンジニアは、自社ではなくクライアント先のオフィスに常駐して業務を行うのが一般的です。契約上は「準委任契約」が主流であり、成果物の納品義務はなく、労働時間に対して報酬が発生します。
SES企業の特徴として、プロジェクトが変わるたびに勤務先が変わる点が挙げられます。数ヶ月から1年程度でプロジェクトが切り替わるケースが多く、さまざまな現場を経験することになります。
自社開発企業とは
自社開発企業とは、自社のプロダクトやサービスを企画・開発・運用している企業のことです。WebサービスやSaaS、スマートフォンアプリなど、自社が主体となって提供するサービスの開発を行います。
自社開発企業のエンジニアは、自社のオフィスやリモート環境で勤務し、一つのプロダクトに継続的に関わることが多いです。サービスの成長とともに技術的な改善や機能追加を繰り返していくため、プロダクトへの理解が深まりやすい特徴があります。
SES vs 自社開発 比較表
以下の表で、SESと自社開発企業の主要な違いを一覧で比較します。
| 比較項目 | SES | 自社開発 |
|---|---|---|
| 勤務地 | クライアント先に常駐(変動あり) | 自社オフィスまたはリモート(安定) |
| 年収(未経験1〜2年目) | 300万〜400万円 | 350万〜500万円 |
| 年収(経験3〜5年) | 400万〜550万円 | 500万〜700万円 |
| スキルの幅 | 広く浅くなりやすい | 深く専門的になりやすい |
| 技術選定の裁量 | クライアント依存で低い | 自社判断で比較的高い |
| キャリアパス | 多様な現場経験が武器になる | プロダクト開発の一貫した経験が武器になる |
| 未経験からの入社難易度 | 比較的低い | やや高い |
| チーム帰属意識 | 薄くなりがち | 高い |
| リモートワーク | クライアントの方針に依存 | 自社方針で柔軟に対応可能 |
| 評価制度 | 現場評価が自社に伝わりにくい | 直接的な成果で評価されやすい |
年収の詳細な相場については、エンジニアの年収ガイドで職種別に解説しています。
SESのメリット・デメリット
SESのメリット
1. 未経験でも入社しやすい
SES企業は、未経験者やプログラミング学習中の方にも門戸を開いているケースが多いです。人材を多く抱えてクライアントに提供するビジネスモデルのため、採用数が多い傾向にあります。実務経験がない段階でも、IT業界への第一歩として入りやすい環境です。
2. さまざまな業界・技術に触れられる
プロジェクトが変わるたびに、異なる業界のシステムや新しい技術スタックに触れる機会があります。金融系のシステム開発を経験した後にEC系のプロジェクトに参加するなど、幅広い経験を積める可能性があります。
3. 人脈が広がりやすい
複数の現場を経験することで、さまざまなエンジニアやプロジェクトマネージャーと関わる機会があります。こうした人脈は、将来の転職やフリーランス独立時に活きてくることがあります。
SESのデメリット
1. 年収が上がりにくい構造
SESのビジネスモデルでは、クライアントが支払う単価からSES企業のマージンが差し引かれます。このマージン率は企業によって異なりますが、エンジニアの手取りが単価の50〜70%程度になるケースもあります。そのため、スキルに見合った報酬を得にくい構造があります。
2. 勤務先やプロジェクトを選べないことがある
配属先はSES企業の営業判断で決まることが多く、希望する技術や業界の案件に就けるとは限りません。場合によっては、テストやドキュメント作成が中心の案件に長期間配属されることもあります。
3. スキルが浅く広くなりがち
短期間でプロジェクトが切り替わるため、一つの技術を深く追求する機会が少なくなりがちです。さまざまな技術に触れられる反面、専門性を高めにくいというジレンマがあります。
4. 帰属意識が薄くなりやすい
自社のオフィスにほとんどいないため、同僚との関係性が築きにくく、帰属意識が薄れがちです。評価面談や社内イベントでしか自社の人と会わないエンジニアも少なくありません。
自社開発企業のメリット・デメリット
自社開発企業のメリット
1. プロダクトに深く関われる
企画段階から設計、実装、テスト、運用まで一貫してプロダクトに関わることができます。ユーザーのフィードバックを受けて改善を重ねるサイクルを経験できるため、サービス開発の全体像を把握しやすいです。
2. 技術選定に関われる可能性がある
自社のプロダクトであるため、使用する技術やアーキテクチャの選定にエンジニアが関与できる機会があります。モダンな技術スタックを採用している企業も多く、最新技術を業務で使える環境が期待できます。
3. 年収が比較的高い傾向
自社プロダクトの売上が直接収益になるため、SESのようなマージン構造がありません。エンジニアの貢献がプロダクトの成長に直結するため、成果に応じた報酬を得やすい傾向にあります。
4. 働き方の自由度が高い
リモートワークやフレックスタイム制を導入している自社開発企業は多いです。勤務地がクライアント都合で変わることもなく、安定した環境で長期的に働けます。
自社開発企業のデメリット
1. 未経験からの入社ハードルが高い
自社開発企業は即戦力を求める傾向が強く、未経験者の採用枠は限られています。ポートフォリオや技術力が問われるため、しっかりとした準備が必要です。入社準備についてはエンジニア転職完全ガイドで詳しく解説しています。
2. 技術の幅が狭くなる可能性がある
一つのプロダクトに長期間携わることで、使用する技術スタックが固定されがちです。特に小規模な企業では、特定のフレームワークや言語にスキルが偏る可能性があります。
3. プロダクトの成長が停滞するリスク
自社プロダクトの市場環境が変化し、事業が縮小するリスクがあります。プロダクトが終了した場合、社内で別のプロジェクトに異動できるかどうかは企業の規模や状況次第です。
4. 業務範囲が広くなりがち
特にスタートアップや中小企業では、開発以外にもカスタマーサポートや営業支援、インフラ管理など多岐にわたる業務を求められることがあります。純粋にコーディングだけに集中したい方には負担に感じる場合もあります。
未経験エンジニアはどちらを選ぶべきか
未経験からエンジニアを目指す場合、SESと自社開発のどちらを選ぶべきかは、現在のスキルレベルと将来の目標によって異なります。
SESを選ぶべき人
- プログラミング学習を始めたばかりで、まずはIT業界に入りたい方
- さまざまな現場や技術を経験して、自分に合う分野を見つけたい方
- 学歴やポートフォリオに自信がなく、まずは実務経験を積みたい方
SESは未経験者にとっての「入り口」として有効な選択肢です。ただし、すべてのSES企業が良質な環境を提供しているわけではありません。入社前に案件の内容やマージン率、研修制度などを確認することが重要です。転職活動で失敗しないためのポイントはエンジニア転職の失敗パターンを参考にしてください。
自社開発企業を選ぶべき人
- プログラミングスクールや独学で十分なスキルを身につけている方
- ポートフォリオとして見せられるアプリやサービスを作った方
- 特定のプロダクト領域に強い興味がある方
- 最初から高い年収を目指したい方
自社開発企業に未経験から入るのは難易度が高いですが、不可能ではありません。しっかりと準備すれば、未経験歓迎の自社開発企業も存在します。IT業界に特化した転職エージェントの活用が効果的です。
現実的なおすすめ戦略
多くの未経験エンジニアにとって、現実的な戦略は以下の通りです。
- まずはSES企業で1〜2年の実務経験を積む
- 実務を通じて得意分野や興味のある技術を見つける
- 業務外でもポートフォリオを充実させる
- 実務経験を武器に自社開発企業へ転職する
この「SESを踏み台にする」戦略は、多くのエンジニアが実際に歩んでいるキャリアパスです。次のセクションで、具体的なキャリアアップ戦略を詳しく解説します。
SESから自社開発へのキャリアアップ戦略
SESで経験を積んだ後、自社開発企業へ転職するための具体的な戦略を紹介します。
ステップ1: SES在籍中にスキルの棚卸しをする
まずは、SESでの経験を通じて身につけたスキルを整理しましょう。使用した言語やフレームワーク、担当した工程(要件定義、設計、実装、テスト)、関わった業界や規模感などをリストアップします。
自社開発企業が求めるスキルと、自分の現在のスキルのギャップを把握することが大切です。
ステップ2: 不足スキルを業務外で補強する
SESの案件で身につけにくいスキル(モダンフロントエンド、CI/CD、クラウドインフラなど)は、業務外の学習で補いましょう。個人プロジェクトやOSSへのコントリビューションを通じて実践的な経験を積むことが効果的です。
ステップ3: ポートフォリオを作り込む
自社開発企業の選考では、ポートフォリオが重要な評価ポイントになります。業務で使っている技術だけでなく、自分が目指す領域の技術を使ったアプリケーションを作成しましょう。GitHubでソースコードを公開し、READMEに技術選定の理由やアーキテクチャの説明を記載しておくと好印象です。
ステップ4: 転職エージェントを活用する
SESから自社開発企業への転職では、IT業界に特化した転職エージェントの活用が効果的です。未経験からITエンジニアへの転職を徹底サポートしてくれるIT専門転職エージェント@PRO人は、SESでの経験をアピールポイントに変えるアドバイスに定評があります。
また、自分らしい働き方を重視してキャリアを考えたい方は、strategy careerに相談するのも選択肢のひとつです。自社開発企業への転職実績が豊富なエージェントを選ぶことで、企業の内部情報や選考対策の精度が上がります。
転職エージェントの詳しい比較はエンジニア転職エージェント比較をご覧ください。
ステップ5: 面接対策を徹底する
自社開発企業の面接では、「なぜSESから転職したいのか」を必ず聞かれます。ネガティブな理由(年収が低い、案件が選べないなど)ではなく、ポジティブな理由(一つのプロダクトに深く関わりたい、技術的な意思決定に携わりたいなど)を軸に回答を準備しましょう。
また、技術面接やコーディングテストが実施されることも多いため、アルゴリズムやデータ構造の基礎的な問題を解く練習も欠かせません。
SESと自社開発以外の選択肢
SESと自社開発の二択だけでなく、エンジニアの働き方にはほかにも選択肢があります。
受託開発(SIer)
クライアントの要望に基づいてシステムを開発する形態です。SESと異なり、自社に持ち帰って開発を行うことが一般的です。プロジェクト管理やクライアント折衝のスキルが身につきやすいという特徴があります。
フリーランスエンジニア
実務経験を3年以上積んだ後、フリーランスとして独立する選択肢もあります。案件を自分で選べる自由度の高さと、高い報酬が魅力です。フリーランスの働き方に興味がある方はフリーランスエンジニアガイドで詳しく解説しています。
社内SE
事業会社のIT部門で働く社内SEも人気の選択肢です。自社の業務システムの企画・開発・運用を担当し、安定した働き方ができる点が魅力です。
よくある質問
Q. SESは「やめとけ」と言われるのはなぜですか?
SESに対する否定的な意見の多くは、一部のSES企業における問題(低い還元率、スキルアップにつながらない案件への配属、キャリアパスの不透明さ)に起因しています。ただし、すべてのSES企業がそうではありません。優良なSES企業では、案件選択の自由度が高く、研修制度も充実しています。入社前に還元率や案件の実績を確認することで、質の良いSES企業を見極めることが可能です。
Q. 未経験からいきなり自社開発企業に入ることは可能ですか?
可能ですが、難易度は高いです。自社開発企業は即戦力を求める傾向が強いため、プログラミングスクールや独学で十分なスキルを身につけ、質の高いポートフォリオを用意する必要があります。IT業界に特化した転職エージェントを活用し、未経験でも採用実績のある企業を紹介してもらうのが効率的です。エンジニア転職の全体像はエンジニア転職完全ガイドを参考にしてください。
Q. SESから自社開発への転職に必要な実務経験年数はどれくらいですか?
一般的に、1〜2年の実務経験があれば自社開発企業への転職は十分に可能です。ただし、単に在籍年数だけでなく、その期間にどのようなスキルを身につけたかが重要です。開発経験(設計・実装)を中心に経験を積み、個人でもポートフォリオを作成していると、転職成功の可能性が高まります。
Q. SES企業の「還元率」とは何ですか?
還元率とは、クライアントが支払う単価のうち、エンジニアの給与として還元される割合のことです。一般的なSES企業の還元率は60〜80%程度ですが、企業によって大きく異なります。還元率が高いSES企業ほどエンジニアの手取りが多くなるため、転職や入社の際に必ず確認すべきポイントです。還元率を公開している企業は、透明性が高く信頼できる傾向にあります。
Q. 自社開発企業の中でも、大手とスタートアップではどちらがおすすめですか?
大手の自社開発企業は、安定した収入と充実した福利厚生が魅力です。一方、スタートアップは裁量が大きく、幅広い経験を短期間で積める可能性があります。安定を重視するなら大手、成長速度を重視するならスタートアップが向いています。自分のキャリア目標やリスク許容度に合わせて選択することが大切です。年収面での違いはエンジニアの年収ガイドも参考になります。
この記事を書いた人
エンジニア転職ラボ編集部
編集長
学生時代からWebサービスを複数運営し、大手Web系企業にてフルスタックエンジニアとして従事。その後フリーランスとして独立し、5年以上にわたり常時複数社のプロジェクトに参画。未経験エンジニアのメンタリング経験を通じて、正確な転職情報の必要性を実感し、エンジニア転職ラボを設立。